酸塩基平衡(アシドーシス・アルカローシス)の特徴を捉えよう。呼吸性?代謝性?

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酸塩基平衡(アシドーシス・アルカローシス)の基礎知識

まず、酸塩基平衡について理解するために、pHの概念から始めましょう。

 

pHとは、水溶液中の水素イオン濃度を示す指標で、スケールは0から14まであります。

7は中性を示し、7より低いと酸性、高いとアルカリ性となります。

私たちの体内では、特に血液のpHが重要です。

 

血液の正常なpHは7.35~7.45の範囲内で、この範囲を外れると体にさまざまな問題が発生します。

 

7.35以下になるとアシドーシス、7.45以上になるとアルカローシスという状態です。

これらの状態は、私たちの体がさまざまな理由でpHバランスを崩したときに起こりますが、その原因は大きく分けて「呼吸性」と「代謝性」の2つに分類されます。

これから、その違いについて詳しく見ていきましょう。

呼吸性と代謝性の違いを理解しよう

「呼吸性」と「代謝性」の違いを理解することは、酸塩基平衡の問題を把握する上で非常に重要です。

呼吸性の問題は、主に肺や気道の換気障害が原因となります。

 

例えば、呼吸がうまくできないことで二酸化炭素(CO2)が体内に蓄積し、酸性に傾くことがあります。

一方、代謝性の問題は、胃や腎臓などの臓器の機能障害が原因で発生します。

これらの臓器が正常に働かないと、酸やアルカリが適切に排出されず、体内のpHが変化します。

呼吸性アシドーシスとは?

呼吸性アシドーシスは、肺や気道の換気障害により、体内のCO2が適切に排出されず、血液が酸性に傾く状態です。

このような状態になると、体はそのバランスを取るために他の臓器を使って代償しようとします。

 

具体的には、腎臓がHCO3-(重炭酸イオン)を再吸収し、H+(水素イオン)を排泄することで、pHを正常に戻そうとします。

慢性閉塞性肺疾患COPD)や喘息、肺気腫などがこの状態を引き起こす代表的な疾患です。

呼吸性アルカローシスとは?

反対に、呼吸性アルカローシスは、呼吸が過剰になりすぎてCO2が過剰に排出され、血液がアルカリ性に傾く状態です。

過呼吸や高山病がその代表例です。

この状態になると、腎臓がHCO3-の排泄を促進し、pHを正常に戻そうとします。

過呼吸の際にビニール袋を使ってCO2を再吸入するのは、このアルカローシスを防ぐための一時的な対策です。

代謝性アシドーシスとは?

代謝性アシドーシスは、臓器の機能低下や障害により、体内に酸が蓄積したり、アルカリが失われたりすることで血液が酸性に傾く状態です。

糖尿病によるケトアシドーシスや尿毒症、または下痢によるアルカリ性物質の喪失が代表的な原因です。

代謝性アシドーシスが進行すると、呼吸が深く速くなる「クスマウル呼吸」という現象が起こります。

これは、体がpHを正常に戻そうとする一つの方法です。

代謝性アルカローシスとは?

代謝性アルカローシスは、逆に体内のアルカリが過剰になりすぎて、血液がアルカリ性に傾く状態です。

副腎皮質機能亢進症やアルカリ性物質(重曹など)の過剰摂取、または嘔吐による胃酸の喪失がその原因です。

この場合、体はHCO3-を排泄することでpHを正常に戻そうとします。

身体の驚くべきバランス調整機能

ここまで見てきたように、私たちの体は驚くほど巧妙にpHバランスを調整しています。

これを「ホメオスタシス(恒常性)」と呼びます。

ホメオスタシスとは、外部環境が変わっても体内の状態を一定に保とうとする生体の働きのことです。

 

例えば、体温が一定に保たれるのもこのホメオスタシスのおかげです。

アシドーシスやアルカローシスが発生したときも、体は自動的にこれを修正しようとします。

この素晴らしい機能が私たちの健康を支えているのです。

 

皆さんも、こうした身体の働きに興味を持ち、自分の健康を大切にしてくださいね。

酸塩基平衡は、普段は意識しにくいものですが、これがどれだけ重要な役割を果たしているか理解することは、健康を保つ上で非常に重要です。